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【PR】『That Thou Art』生まれ変わりの光
中野信子 with 日東電工株式会社「RAYCREA™」2024.11.12 | REPORT
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木々に囲まれた参道はやがて石段となり、その先に高宮祭場という古代より続く祭場がある。
世界遺産で日本最古の神社の一つとされる宗像大社 辺津宮(へつみや)において、女神・市杵島姫(いちきしまひめ)が降り立った最も神聖な場所だ。
その傍らにある高宮斎舎に、今年10月、「宗像みあれ芸術祭」(福岡・宗像市)にともなって招待作家のアートが展示された。
脳科学者・中野信子氏による『That Thou Art』だ。
自分という、そこにある何か
「『生まれ直し』というのは以前から関心のあったテーマなんです。高宮斎舎は伊勢神宮から譲り受けたもので、20年に一度の“生まれ変わり”を経てきた祠です。この場所でそうしたプロシージャを体験できることを目指しました」
中野氏は作品のコンセプトの経緯を話す。「みあれ(御生)」とは、神の再降臨を指す。その祭りで、一度、自分以外のものになって、再び自分になる。中野氏は「自分」とは何かを問う。
「人は、自分という確固たるものが環境や他者と切り分けられていると思っていますが、実は物理的にも認知的にもその境界ははっきりしない。あり得ないことなんです」
人の体は絶えず新陳代謝を繰り返し、1秒たりとも同じ状態ではない。量子レベルでは常に環境の物質と混じり合っている。自分の考えや思想を他人に伝えることはコピーと同じで、そこにはもう一つの自分が出来ている。
「でも殻で守られるのではなく、能動的に外界との“やりとり”をしているからこそ自分たり得ているんです。閉じた系ではエントロピーは増大し続け、滅びていくだけです。物理的にはシームレスな環境の中の特異点が、私たち人間であり、生命なんです」
作品では、祠の中に浮く鏡が発光しており、あるタイミングで光は消え、像を映す。同時に、周波数帯域毎に色分けした中野氏の脳波のパターンを光で発し、鏡の光と互いに干渉し合う。
「古代、鏡は誰でも使えるものではなく、神権の象徴でした。鏡は自分の姿を見るように出来ていますが、脳科学的にはそれは難しいことなんです。脳は自分の姿にバイアスを掛けて、より良く見せます。お化粧を繰り返したり、やたら髪型が気になったりするのは、バイアスへの揺り戻しが起きているからです。客観的に自分を見直そうとすることはメタ認知なんですね。鏡は古代の権力者にメタ認知を与えるための装置だった、と私は考えています」
鏡像を映し、かつ自ら発光するもの
光る鏡と脳波のパターン光には、日東電工株式会社の特殊フィルム「RAYCREA™(レイクレア)」が用いられている。アクリル板などに貼ることで小口から入射した光を面として拡散発光させられるものだ。そして透明であるという独自の特徴によって、光が消えると裏側の鏡面がきちんと機能する(24年11月号参照)。
※RAYCREAはNittoグループの日本国およびその他の国における登録商標または商標です
「RAYCREA™は自ら発光するので、生命のメタファーになるかなと。透明で上品に輝く感じが気に入っています。自然界にはない光る平面が崇高畏怖な印象を与え、“Awe Experience(オウ体験)”と言いますけれど、自分の存在に揺らぎを与えるような効果もあります。でも惹かれてしまう。雷のような光学現象も人は大好きで、驚くけれど見たがりますよね。時に光は脳活動にダイレクトに影響を与え得るので、その操作は注意が必要ですが、とても奥深いものだと思います」
鏡の姿は本当の“自分”なのか、光が消えた後にもう一度見る姿はさっきの自分とは異なる自分だ。また、脳はよく見えない部分を補完し、経験から平均値の像を認知させるという。それも本当の自分をわからなくする。
ここで神を祀り始めた頃、人間は人も人でないものについてもわからないことばかりだったはずだ。だからこそ神も“生まれた”。今、果たして人間は人のことも自分のこともわかっている、と言えるだろうか。
中野 信子(なかの・のぶこ)
1998年東京大学工学部応用化学科卒。
2008年東京大学大学院医学系研究科脳 神経医学専攻博士課程修了。
2008~2010年 フランス国立研究所勤務。脳や心理学をテーマに研究や執筆を行う。
近年はさまざまなメディウムを駆使して、脳波を基軸としたインスタレーションなど幅広い表現を展開
日東電工株式会社 RAYCREA™ 問い合わせ窓口
RAYCREA™製品ページ:
https://www.nitto.com/jp/ja/products/raycrea
RAYCREA™問い合わせフォーム:
https://form.nitto.com/jp/ja/form/inq_prod2/index.jsp?id=raycrea