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良品計画は2024年2月に本社を移転した。「無印良品」が西友のプライベートブランドとして始まった、1980年以来の“創業の地”である東京・池袋を初めて離れた。同社は2021年から「第二創業」をうたい、改めて原点を見据えた経営戦略を執るとともに、無印良品以外の事業も進めている。空間設計事業はその一つで、無印良品でフォローしてきた衣食住から、“暮らし”をさらに広げて捉え、「家・オフィス・商業・公共」と社会におけるさまざまな場所づくりを手掛けている。
会社や人員の規模に応じたスペース確保、従業員間コミュニケーション・交流の不足、コロナ後のワークスタイルの変化といった、企業にある一般的な問題も解消しつつ、会社そのものも変わりゆく中、器であるオフィスも見直されたことになる。
新オフィスは同社空間設計部が手掛けた。はたらく場であるオフィスも“暮らし”の一部であると捉え、“暮らす”側の視点から研ぎ澄ました。オフィスというハコを綺麗につくることにとらわれ過ぎず、無印良品の『これでいい』というコンセプト同様に、過度な主張をやめ、パッケージやブランドに惑わされない、シンプルかつ合理的で、普遍性のあるデザインがなされた。
「集中する」「集まって話す」「リフレッシュする」という三つの営みがしやすいよう、1300坪のフロア面積を生かした、壁のない大空間を部署ごとのグループアドレスで自由に使うというのが基本。ビルの設備コアで東西に分け、web会議などのブース、大テーブル、丸テーブルなどが配される。コア側から開口部側に向かって、緩やかに人の密度感が薄まっていくようなイメージだ。
オフィス内は、2023年秋から展開が始まった無印良品のプロフェッショナル向け商品が用いられており、家具・什器・備品のおよそ99％は自社製品という。特に、店舗用什器の鋼材を転用した角パイプテーブルは、ミニマルな構造で強度もあり、パーチクルボードの天板もあってオフィス然とした雰囲気がない。電源タップもスマートに収納している。まさに『これでいい』の象徴とも言える。
新オフィスは、同社のいう『はたらく場の環境改善』のプラクティスだ。『これでいい』のつくり方は、働きやすさの向上とともに無駄な資源消費をなくし、結果的にコストも低減できる。例えば、バックヤードなどこれまでデザインの手が届きにくかった、さまざまなワークプレイスの環境改善にも貢献できるとする。
“暮らし”の一部であるからこそ、無印良品において衣食住のディテールを手掛けてきた同社ならではのオフィス事業へのアプローチがある。例えば、ユニフォームの提案やアートのセレクト、オフィス内菓子の販売（現在は自社向け運用）といった、無印良品のアイテムも活用できる。空間設計部では、企業や自治体もしくは設計事務所と協働しながら、『働く場の環境改善』を進めていきたいとする。
東京・飯田橋駅に程近い新オフィスでは、見学の予約もHPより受け付けている。写真や文章では伝わりにくい、“無印らしさ”の体感をお薦めしたい。