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住み手にも建築家にも選ばれる室内ドアの源流を探る/神谷コーポレーション
2024.05.16 | REPORT
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日本の住宅ではかつて襖ふすまや障子、欄間などが空間を区切る機能・装飾を果たすものとしてあった。現代では襖や障子の多くはドアや引き戸に置き換わり、また、鴨居や長なげ押しを始め、回り縁や幅木、見切り材もより小さく、目立たなくする傾向が見られる。そうした住宅空間において、室内ドアの在り方も変わりつつある。現代の住宅に適したドアメーカーの生産拠点を訪ねた。
Photographs : Nacása & Partners(*以外) Text : Hiroki Shinkawa
室内ドア専門メーカー、神谷コーポレーション。現代の生活様式や空間設計に合わせ、品質やデザインを大きく向上させたものづくりを行っている。
それが「フルハイトドア®」だ。枠をなくし、ドアを天井までの高さとすることで、空間になじませ、広がりを生み出す。一方、木製のドアを高く、大きくすれば、木の特性上、反りも大きくなる。
今回は、その木製ドアの反りを克服し確かな製品とする、同社の「KAMIYA伊勢原ファクトリーショールーム」及び併設する研究開発施設「KAMIYAI ntelligence LABORATORY(以下KI-LABO)」を、建築家の井上玄さんが訪ねた。
モノが語る説得力
KI-LABOは、2023年5月に開設。ドアの試験場や商品開発ヤード、品質比較パビリオンなどで構成されている。ドアの各種試験として、照射加熱試験やガラス戸の衝撃破壊試験、開閉衝撃試験、二室反狂環境試験(温度と湿度の異なる二室間にドアを設置してドアの変形量を計測)などが行われている。試験結果には同社独自の厳しい基準を設け、それをクリアしたものだけが製品化される。
フルハイトドア®をより優れた製品としているのがその構造だ。一般的な室内ドアの厚みが30〜36㎜に対して、40㎜としている。内部構造はコア材に加え、スチールの角パイプが剛性を高めている。さらに、ドア内部の空気を逃がす設計になっており、熱や水分による木材の収縮の影響を軽減する。これは同社の特許技術「エアスチール製法」で、製品を業界随一のものとする大きな要因だ。
KI-LABOではドアの内部構造や構造の採用意義などが、各種の試験や展示からよく理解できる。製品そのものが語るリアリティーと説得力は大きい。
「最初に神谷コーポレーションに関心をもったのは、枠なしの納まりがドアだけでなく製品として実現できる点。仕上げや意匠だけでなく、施工側にとって高い精度が約束されている。住まいでは耐久性や品質は重要で、KI-LABOの試験風景を見ると安心できる製品になっていると分かる」と井上さん。
KAMIYA Intelligence LABORATORY & KAMIYA 伊勢原ファクトリーショールーム
建築家側の視点をもった高品質ドア
「設計する立場としては、壁も家具も建具も境界なくデザインし、空間としての体験を高めたい。建築家が既製品を避ける理由はそれをコントロールできないことが多いから。ドアも選択肢が少なかった。神谷コーポレーションはまったく違う。納まりの悩みどころをつかみ、建築家のこだわりに応えるだけでなく、安定した高品質も担保している」。
同社のコピー『たかがドアから、だからドアへ』。それはドアづくりへの自負と自信の表れだ。井上さんは「木製ドアのプロフェッショナルとして建築家より先を見ている気がする」と付け加えた。
同社ではKAMIYA伊勢原ファクトリーショールームはもちろん、建築家にはKI-LABOも見学の予約を受け付けている。現場での体感をお薦めしたい。
井上 玄 GEN INOUE
建築家。1979年・神奈川県横浜市生まれ。吉田研介建築設計室を経て、GEN INOUE設立。住宅、別荘の設計を中心に、建築撮影や建材メーカーのデザインコンサルティングを始め、自社で一棟貸しのヴィラ運営に携わるなど多角的に活動。
建築家専用サイト
https://www.fullheight-door.com/corporatebody/modelhouse/
<問い合わせ>
神谷コーポレーション
神奈川県伊勢原市鈴川50
TEL.0463-94-6203
URL:https://www.fullheight-door.com
営業時間/10:00~17:00(完全予約制)
水・土・日曜、祝日休