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「使うだけでサステナブル」な建材サンプルのプラットフォーム/Material Bank Japan
2023.07.28 | REPORT
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店舗や施設の内装に使われる建材の種類は膨大だ。あらゆる分野で多品種多様化が進み、把握しきれない程だろう。その中からプロジェクトにあった素材を、WEBやカタログで探す。それ自体が結構な労力だし、そこから各社にサンプルの取り寄せを申し込み、配送されたいくつものサンプルを整理し、梱包材や段ボールを廃棄する。作業自体にうんざりしながら、環境意識の高いデザイナー諸氏であれば、そのたびにもやもやした気持ちにならないだろうか。
Design Future Japanが展開するMaterial Bank Japan(マテリアルバンクジャパン)は、そうしたデザイナーや設計者の業務効率化を図るとともに、環境負荷低減を可能にするサービスだ。メーカーの垣根を越えた建材のポータルサイトとともに、サンプル送付をパッケージ化した点が画期的だ。2019年にアメリカでサービスをスタートさせ、急速な成長を遂げた同サービスは、現在では北米だけで11万人以上の会員と500以上のブランドのマテリアルを取り扱う。
特長は、デザイナーが、条件やニーズに適った建材を探しやすいサイトを構築していること。例えば、環境意識の高い建材という条件でも横断的に選べる。同時に、各メーカーから調達した建材のサンプルを自社のロジスティクスセンターから、会員が選んだものだけを抽出し、当日発送する点も大きい。ここでもロボティクスを含む最新のICT技術が活用されている。
サンプルはキレイにレイアウトされて専用ボックスで送られてくる。標準サイズは図面が収まる箱形で、サンプルの量やサイズによって封筒型の薄形ケースだったり、より大きな箱へもアレンジされる。これによって前述の一連の作業がワンストップで完結する。不要になったサンプルは配送ボックスに戻して無料で返送でき、廃棄の処理からも解放される。同社は戻ってきたサンプルを再利活用する。アメリカでは平均して一つのボックスに4ブランドのサンプルが同梱されているという。単純に言えば、梱包や配送のエネルギーを四分の一にしていることになる。
デザイナーは、本来の業務であるクリエーションやインスピレーションに時間を集約でき、利用するだけで、特別に意識せずとも環境負荷の低減に貢献できるわけだ。扱う建材は、多岐にわたる。床・壁の塗材からタイル、天然石、金属、テキスタイル、シート材から家具の部材やファブリックサンプルも含む。
会員は案件を持ったプロのデザイナーだけに限られる。メーカー側もより確度の高い営業アプローチにつながり、効率化が図れる。プラットフォームとしてデータを集約できるので、各メーカーにとってはそれも大きな魅力だろう。サンプル配送が効率化された結果、採用までのアクションやプロセスがよりスムーズになるはずだ。
日本での展開は2023年から始まったばかりだ。6月現在で170ブランドが参画、現在は実証事業期間としてサービスを提供しており、HPにてウェイティング登録も受付けている。米国同様のロジスティクスセンターも設立済で、サービス、システムも同様とする。3年で500ブランド程度のラインアップを目標としている。
新しくデザインするという行為は、当然資源を使い、環境負荷をかけることから逃れられない。デザインそのものを持続可能とするための試みとして一考の価値があるだろう。