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ハニカム × 昭和飛行機工業

2016.10.03 | REPORT

メーカーの努力により開発された新しいマテリアルは、デザイナーの独創的なアイデアを伴って、これまで見られなかったような仕上げを可能にする。この連載では、最近開発された建材や質感、表情に特徴のあるマテリアルを紹介。その活用法や使用上の注意を探っていく。

芯材がもたらす
新たな表現の可能性

同じかたちが繰り返し並ぶ表情が美しいハニカム。普段はパネルの芯材として使用されることが多く、その表情を見せる機会はあまり多くない。


今回、ハニカムを生かした人工衛星の筐体などを手掛ける昭和飛行機工業に取材し、家具や内外装の仕上げ材としての可能性を探った。


普段は芯材として使用されるハニカムは、その美しい断面を見せる機会が少ない
普段は芯材として使用されるハニカムは、その美しい断面を見せる機会が少ない

ハニカムの種類

ハニカムは、素材やセルの形状により、下記に分類される。


①アルミハニカム
アルミ箔を用いたハニカム。金属としては比重が軽く、耐食性に優れるため、サンドイッチパネルとして航空機の機装品や家具材の芯材として多用される。また、均一なハニカムを通ることで空気の流れを整える“整流性”を生かして、スーパーマーケットなどのエアーカーテンにも使用される。


②ペーパーハニカム
軽量で扱いが容易な上に安価であるため、建具や家具材の芯材として多用される。クラフト紙やライナー紙などの紙の種類やセルサイズも豊富で、応用性が高い。


③アラミドハニカム
アラミド繊維の不織紙にフェノール樹脂を含浸させたハニカム。耐衝撃性や耐食性、耐炎性に優れる。サンドイッチパネルとして航空機のインテリア部材に利用される。


④フレキシブルハニカム
2次・3次曲面に追従する成形性の高いアルミハニカム。通常のハニカムは荷重と直角方向の力で変形が生じるが、この素材は独自の釣り鐘形のセルにより自在に曲げられる。曲面の多い航空宇宙分野に使用される。製造を手掛けるのは、同社を含めて世界で3社のみである。


3次曲面に追従するフレキシブルハニカム。独自の釣鐘形のセルにより自在に曲げることが可能だ(写真提供/昭和飛行機工業)
3次曲面に追従するフレキシブルハニカム。独自の釣鐘形のセルにより自在に曲げることが可能だ(写真提供/昭和飛行機工業)

活用のヒント

次に、デザインに関わる素材の特性を見る。


昭和飛行機工業の手掛けるアルミや紙のハニカムは、長さ1200㎜、幅2400㎜が標準製作寸法で、厚さは3㎜から。現場で接着して、更に大きなものをつくることも可能だ。アラミドハニカムの場合、1115×2400㎜の寸法でストックしており、厚さ800㎜の塊から自由に裁断できる。


価格は、1200×2400×10㎜のアルミハニカムを1枚だけ製作すると4〜5万円。10枚だと半値以下になる。安い材料ではないが、小ロットで対応できるのは魅力だ。


サンドイッチパネルとする場合、面材は選ばない。金属や樹脂のほか、紙を貼ることもできる。カラーアルマイト処理を施したアルミハニカムの両面に、1.8㎜厚という極薄の化学強化ガラスを貼ったパネルを製作した事例もある。


ハニカムをむき出しで使う場合は、枠が必要になる。その場合、ハニカムに力を掛け、少し縮めた状態で枠に飲み込ませ、復元させると固定しやすい。


パネルとして挟み込むのではなく、片面だけにパネルを貼ることも面白い。絵や写真を貼り、ハニカムを通して見ると、パネルに対して垂直な部分はクリアに見えるが、それ以外の部分についてはドット絵のようにぼやけて見える。視点によって見え方が変わるため、あえて全体を把握させずに、移動しながら見せる展示ディスプレイなどに向いているかもしれない。


アルミハニカムを通してものを見ると、視点によって見え方が異なるため、全体を見渡すことができない
アルミハニカムを通してものを見ると、視点によって見え方が異なるため、全体を見渡すことができない


着色も面白い。アルミ箔の場合、前述したアルマイト処理でさまざまな色が付けられる。形状ゆえに塗装性は良くないが、適切なプライマーを用いれば塗装も可能だ。紙のハニカムの場合、紙の選択と共に印刷で色や柄を付すことで、ハニカム化した時に立体的な色柄を表現することができる。なお、フェノール樹脂を含浸させる前の白色なアラミド繊維は染料や顔料が染み込みにくく、印刷や塗装には適さない。


セル形状の操作も可能性がある。均等な六角形が並ぶように伸ばすのが本来の技術だが、展張の際にあえて力の掛け方を不均一にして、セル形状にムラをつくってもよい。ただし、グラデーションなど、意図した不均一さをつくり出すことは難しいことには留意したい。セル形状の操作として、ハニカムをプレスしてセルを潰すという手もある。ハニカムは力が均等に掛かるので、最後まで同じ潰れ方をする。この表情が独特だ。


加工に関しては、ラフに切断する際は、紙もアルミハニカムも包丁を用いる。紙はもちろん、アルミ箔も厚みによってはカッターでも切れる。巨大な塊の段階で斜めにカットすることもできる。ただし、セルの形は正六角形ではなくなる。またハニカムの端部を整える時は、ハサミを用いる。切り過ぎるとセルが壊れるので、注意が必要だ。加工時の注意点としては、接着で成り立っている素材なので、加工機械などの油に触れないように注意する。


ハニカムは、アルミ箔や紙などを接着しながら重ね合わせた後、均等な六角形が並ぶように引き伸ばして製作する。引き伸ばし方次第では、新たな造形が考えられるだろう
ハニカムは、アルミ箔や紙などを接着しながら重ね合わせた後、均等な六角形が並ぶように引き伸ばして製作する。引き伸ばし方次第では、新たな造形が考えられるだろう


独自の美しさと特性を持つハニカム。仕上げ材としての新たな表現が期待される。

昭和飛行機工業

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