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INTERVIEW　　タイルの今に出会う

「デザイナーズ・タイル・ラボ」（以下DTL）は、タイル業界トップシェアを持つLIXILが、大きく変化する時代を捉えながら、デザイン性・機能性に特化してチョイスしたタイルのカテゴリーだ。デジタルプリントを始めとする最新技術や素材開発が進む中で、改めてタイルが持つ建材としての魅力、空間づくりにもたらす価値にフォーカスしている。
今回、大小さまざまなスケールの商業施設、住宅などの設計を手掛けるsinatoの大野力さんに、「INAXタイルコンサルティングルーム東京」（東京・新宿）で「DTL」のタイルに触れてもらいながら、自身の設計におけるタイルを選ぶポイントや、「DTL」の可能性について語ってもらった。

「DTL」のWEBサイトでは、「デザインLAB」「機能LAB」「ものづくりLAB」という三つのテーマで、インタビュー記事やレポートを発信すると同時に、「タイルのいま」を捉えた六つの方向性でピックアップした製品提案が展開。サビやすり傷といったラスティックな印象を演出する「VINTAGE VIBE」。石や木、ガラス、金属、テキスタイルなどの質感をリアルに表現した「SUPER REAL」。異なる素材を組み合わせ、新たなタイルの表情を感じさせる「HYBRID TEXTURE」。陰影や奥行きのある立体的なタイルを集めた「LIGHT & SHADE」。色や形状の組み合わせで多彩なパターンを提案する「PLAYFUL COLORS & COMBINATION」。タイルの焼き物としてのゆらぎやムラ、風合いに焦点を当てた「YAKIMONO DIVERSITY」をコンセプトにカテゴライズされたアイテムに出会うことができる。「タイルを選ぶ際には、耐久性や滑り抵抗係数といった性能と、空間のコンセプトを表現するためのマテリアルとしての二つの視点があると思います。また、タイルのサイズや目地が空間にもたらす“解像度”も大事にしています。目地の太さやグリッドの間隔は、その空間で感じるスケール感に影響を与えます。大きな商業施設では、あえてサイズの異なるタイルや目地を合わせることで、エリアごとの情報量に変化を与え、空間を緩やかにゾーニングするという手法を用いることがあります」（大野さん）その言葉通り、sinatoのプロジェクトでは、空間の一面を同一のタイルで埋めるのではなく、複数のタイルを組み合わせ、単なる意匠としてではなく、人を誘引するような場づくりやサイン的な役割を与えるなど、利用者の心理に働きかけるような使い方が試みられている。「DTL」にラインナップする製品は、ウェブサイトや東京・新宿と大阪・四ツ橋にある「INAXタイルコンサルティングルーム」でサンプルを見ることができる。さまざまな形状や素材感の他、立体感のあるタイルもそろっているため、実物に触れることで施工時のイメージを掴みやすくなるだろう。
「最近は、空間づくりにおいて手仕事の跡や素材の表情など、“不揃いなもの”や“コントロールされていないもの”が求められていると感じます。それは多くの人が素材そのものの魅力やストーリーに価値を感じていることの表れと言えます。タイルは工業製品ですが、一方で焼き物という完全には制御できない質感も持ち合わせている建材です。また、反射した光や、立体感のある形状から生まれる陰影など、タイル単体に収まらない、周辺にさまざまな影響を与えることができる可能性のあるものです。『DTL』のアイテムを始め、多彩なタイルが空間にどのような現象を巻き起こすことができるのか私自身も挑戦してみたいですね」と大野さん。「DTL」が建築家やデザイナーの創造性を刺激し、タイルによる新しい空間の体験価値を醸成する場として発展していくことに期待したい。