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バイオエタノール暖炉 「EcoSmart Fire 」で “ 温かみのある空間” をデザインする/メルクマール
2021.11.02 | INTERVIEW
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ストリックランド 赤尾洋平さんに聞く炎の演出
オーストラリアで生まれたバイオエタノール暖炉のパイオニアブランド「EcoSmart Fire(エコスマートファイヤー)」。トウモロコシやサトウキビなどを原料としてつくられるバイオエタノールは燃焼中に煙やすすを出さないため、専用の煙突や換気設備などは一切必要とせず、安全かつ手軽に本物の“炎”をインテリアに採り入れることができる。宿泊施設や飲食店を始めとする数多くの商空間に導入実績を持ち、昨年、京都に開業したラグジュアリーホテル「HOTEL THE MITSUI KYOTO」(21年3月号)のオールデイダイニング「FORNI」もその一つだ。その空間デザインを手掛けたストリックランドの赤尾洋平さんに、同製品を導入した経緯と、炎を採り入れたデザインの可能性について聞いた。
「EcoSmartFire」で店内に揺らめく炎のラインを生む
京都・二条城を望む三井総領家の邸宅跡地に建つ「HOTEL THE MITSUI KYOTO」。棟は水盤を擁した日本庭園を囲うように建てられ、1階のオールデイダイニング「FORNI」はその景色を真正面に眺められる場所に位置している。店舗設計を手掛けたストリックランドの赤尾洋平さんは、空間のデザインコンセプトをこう説明する。
「季節や時間によって移ろう中庭を感じることがゲストにとっての京都体験になると考え、日本邸宅が持つ空間スケールと中庭とを関連づけながらデザインしていきました。まずは中庭を眺める画角として最適な奥行きと幅、高さを導き出し、客席スペースは庭寄りを一段低く設定し、家具の高さも目線を遮らないように調節しています。また、庭と反対側の壁にはミラーを設置し、逆方向に座っている人にも景観を堪能してもらえるように工夫しました」
「FORNI」は朝はビュッフェ、ディナータイムはイタリアン、夜はバーへと、一日のうちで使い方が変容する。朝は日本的な感性に訴える設えと中庭、自然光との取り合わせで京都らしさを。ディナータイム以降は同じ空間でありながらも、雰囲気ががらりと変わる仕掛けが随所に施されている。
「店内はバー、ダイニング、キッチン、角を曲がってセミプライベートルーム、個室と、エントランスからは奥行きのあるL字型の形状をしており、全ての客席エリアが中庭に面しています。一日を通して、この空間を最大限に活用するために、まず全体のカラースキームをブラウンとグレーの濃淡で統一しました。そして、今回、大切にしたのが照明、とりわけ炎の明かりです。『FORNI』とはイタリア語で複数の窯を意味しています。エントランスから一番遠くに見える位置に店名の由来となるピザ窯を置き、バーとダイニング、ダイニングとキッチンの間の2か所に『EcoSmart Fire XL1200』を設置しています。『EcoSmart Fire』はゾーンを緩やかに仕切る役割と、エントランスからピザ窯へと至る炎をつなぐ役割も担っており、夜は『EcoSmart Fire』の炎越しに、店内の賑わいを見通すことができます。また、天井のダウンライトや壁照明も炎の色に合わせて2200から2400ケルビン程度の暖色系の色温度のものとしました。また、天井にも錫の箔を貼り、炎の揺らめきやにじみの効果がより高まるようにもしています」
更に、店内の明かりが窓ガラスに映り込んでライトアップされた中庭が見えにくくならないように、「EcoSmart Fire」を窓に対してはすに置き、照明器具も梁よりも上部に設置されている。こういった配慮もなされ、緻密な計算の下で、夜も「FORNI」の上質で暖かな雰囲気を楽しむことができる。
自然要素である“本物”の炎を手軽にインテリアに取り込む
赤尾さんは、これまでも海外のハイエンドホテルを始め、さまざまな商空間に「EcoSmart Fire」を採用してきたという。
「今、商業施設では心身のウェルネスの観点からも自然の要素を採り入れる欲求が大きくなってきています。私も普段から、その空間ごとに適した自然の要素を入れ込みたいと考えており、木や石、緑、水などと同じく炎もまた、人間の感覚に訴求するパワーを持つ“本物”の自然の要素。いくら照明の技術が進化したとしても、やはり人工的な明かりで代替することはできないでしょう。『EcoSmart Fire』を設置することによって、その“本物”の炎を手軽なインテリアアイテムとして空間に入れ込むことができます。薪暖炉やガスを採り入れる方法もありますが、やはり夏場は厳しい。『EcoSmart Fire』は、暖炉などと比べフードや煙突も要らないので、他のアイテムと組み合わせることも可能です。『FORNI』でも、ディスプレイ棚と一体化させ、京都にまつわる作家に製作してもらった陶器やガラスの器、錫の器、かつて三井家の門に使われていた木材の一部を加工したオブジェなどを飾っています」
最後に赤尾さんは、「EcoSmart Fire」の今後の可能性について、こう語る。
「燃焼させる炎は、もっと薪暖炉に近づけた野性的な感じと、よりコンパクトでスマートな感じのどちらへの進化もあるでしょう。他にも、吹き出し口や反射板が銅板製のタイプが登場すれば、炎の揺らめきが更に印象的に感じられるのではと思ったりもしています。そして、いつかはホテルの客室に『EcoSmart Fire』を入れたいと考えています。それもスイートルームだけでなく、スタンダードルームにも。スイッチを押して部屋の照明を点ける感覚で『EcoSmart Fire』の炎をともす。そのホテルを訪れたゲストにとっては、それだけで忘れられない体験価値になるはずです」
EDITOR’S PICK UP
編集部が選ぶ、
ラグジュアリーホテルのレストランで出会えるEcoSmart Fire
品川プリンスホテル(東京・品川)
DINING&BAR TABLE 9 TOKYO
GRILL&STEAK
設計/デザインスタジオ・スピン
開業/2017年12月13日
DESIGNPOINT
「品川プリンスホテル」メインタワー39階にあるレストラン。2000平米という大空間に、フュージョンダイニングやバーラウンジなど異なる九つのエリアを設けている。その中のグリルレストラン「グリル&ステーキ」では、温かみのあるウッディな空間の中に「EcoSmart Fire」の炎が映える。炎越しに見える東京の夜景は格別。
ホテル雅叙園東京(東京・目黒)
New American Grill
“KANADETERRACE”
設計/イリア
開業/2017年9月1日
DESIGNPOINT
「和で洋を奏でる」をデザインコンセプトとしたグリルレストラン。ホテル雅叙園東京の全館を貫く、和の要素をもって洋風デザインを実現した。囲炉裏の周りに人が集まるように、本物の炎を入れたいとの思いで「Ecosmart Fire」を採用。改修プロジェクトでは消防の認可も取得済みであることや、排気設備が不要なことでコスト的なメリットもあったという。
東京エディション虎ノ門(東京・虎ノ門)
Gold Bar at EDITION
設計/隈研吾建築都市設計事務所
開業/2022年1月オープン予定
DESIGNPOINT
日中は落ち着いた雰囲気のラウンジ、夜はカクテルバーへと、時間帯を問わずシームレスな宿泊体験を創出。日本の「焼杉」にインスパイアされた黒塗りの木材を多用した壁面や、大和張り仕上げの壁と木製スラットのパネルが、高さ5mの天井を強調する。ネロマルキーナ大理石を用いた暖炉が、居心地の良い雰囲気のバーを更に独創的に演出している。
株式会社メルクマール
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