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50年間変わることのないデザイン

2020.11.30 | INFORMATION

セラトレーディングが設立当初より取り扱っているブランドの一つであるVOLA(ボラ社)。デンマークの水栓金物に特化したメーカーだ。スカンジナビアの代表的な建築家、アルネ・ヤコブセン(1902-1971年)がデザインしたシリーズを主力商品として、長く世界中で愛されている。改めて、その魅力をセラトレーディング・営業部コミュニケーショングループの宮本真希氏に聞いた。

タイムレスなデザイン

多くの建築家同様、アルネ・ヤコブセンも建築だけに留まらず、空間全体をデザインするため、さまざまなものを手掛けた。モダニズムの合理性と、人の身体感覚や感情の隙間を埋めるように、家具や照明、食器、ファブリックと幅広い。ヤコブセンの建築は知らないまでも、セブンチェアやエッグチェアはどこかで見ているだろう。そして同様に、知らずとも使ったことがある人も多い、ヤコブセンの代表作であるプロダクトがVOLAの水栓だ。

1968年にVOLAの創業者、ヴェルナー・オーバーガードとともに、壁の内側へ湯水の配管を納め、壁の外側へスパウト(吐水口)とハンドルを出す 斬新なビルトイン水栓を開発。当時それはまったく新しいコンセプトで、均整の取れたプロポーションやシンプルで無駄のないディテールは、世界各国で称賛され、70年代から日本を含む多くの国へ輸出されている。


そして、感嘆に値するべきは、内部機構の部品やバリエーションの追加などを除いて、当初からデザインが変わっていない点だ。50年経っても色褪せないプロダクトデザインの存在は、新しくデザインすることの意味すらも思い巡らせる。単に機器のフォルムを生み出す以上の、ヤコブセンの人と水まわりの関係性への深い眼差しを感じる。


近年トレンドとなっているマットグレーの洗面器とブラッククロム湯水混合栓(169,500円)の組み合わせ例。水栓と同色の目皿もオプションで用意されている ※表示価格は税抜価格
近年トレンドとなっているマットグレーの洗面器とブラッククロム湯水混合栓(169,500円)の組み合わせ例。水栓と同色の目皿もオプションで用意されている※表示価格は税抜価格

「機能性と美しさを兼ね備えた、主張しすぎないタイムレスなデザインだと思います。50年以上変わっていないという点は大きな特長と言えます」と宮本氏。


製造方法も当初より変わっていない。主要なパーツはすべて真鍮の削り出しで、ソリッドで堅牢なフィーリングを支える大きな要素となっている。一見、華奢にすら思えるレバーも、実際につまみ、動かしてみれば、高い信頼感をもたらしていることがわかる。


一般的な鋳造に比べると、切削加工のみの成形は生産効率が下がり、高コストだ。しかし、長寿命でリサイクル性も良く、総じて環境負荷が小さい。「VOLAは、廃棄物を極力出さないようなものづくりを50年も前から実践していて、北欧の高い環境意識の一端が感じられます」


また、機械加工と職人の手業を巧みに組み合わせており、「例えば、手作業による磨き工程は専門の職人がいて、3年以上の経験を経て、初めて製品の加工をさせてもらえることになっています。磨き一つでもそれだけのこだわりを傾けているんです」。

変わらない水と人の関係

ヤコブセンは、デザインはもとより、プロダクトの素材と色が空間の雰囲気に大きく作用することを熟知していた。VOLAのシリーズも、オレンジとグレーの水栓の導入に続き、さまざまなカラーを展開。


現在、セラトレーディングではオリジナルラインとして、12色( ブラック、マットブラック、ダークグレー、ライトグレー、ホワイト、クロム、ダークブルー、ライトグリーン、イエロー、オレンジ、ブライトレッド、カーマインレッド)を販売している。定番のクロムに続いて人気が高いのはマットブラックという。


「近年のトレンドとして、水まわりのインテリア化が進んでいて、光沢があって反射の強いクロムメッキではなく、より周囲に馴染むマットな色合いの金物や陶器が選ばれています。水まわり機器だけでなく、空間全体と合わせたトータルコーディネートのニーズが高まっているのを感じます」


各パーツは無垢の真鍮からの削り出しでつくられる。シンプルなデザインゆえに高い精度が要求される
各パーツは無垢の真鍮からの削り出しでつくられる。シンプルなデザインゆえに高い精度が要求される


さらに、セラトレーディングでは2020年の新商品として「Exclusive Color ( エクスクルーシブカラー)」をラインアップした。元来、VOLAが備え持つ合理性や機能美に加えて、「より微細なニュアンスを持った製品」(宮本氏)となっている。ブラッククロムとカッパー、ゴールドという3つの色味はいずれも趣向と高級感に富んだもの。特にブラッククロムは光の加減によって異なる表情を見せる奥行きのある色だ。


エクスクルーシブカラーには、すべてPVDコーティング(PhysicalVapor Deposition)という技術を用いており、一般的なメッキよりも硬く薄い金属膜を形成し、製品としての耐久性も向上している。商業施設のように、不特定多数が使用し、清掃頻度の高いパブリックな空間では、意匠性の新しさに加えて、有用なスペックアップではないだろうか。


ホテルの客室でも水まわりとベッドルームが近い存在になりつつあり、また新型コロナ感染対策から、オフィスや商業施設でも手洗いの必要度が高まっている。周囲の環境や雰囲気に適したカラーが選べることは、50年の不変のフォルムにとって、時代に応じた新たな武器になるだろう。


人の意識や行動規範も頻繁にアップデートが要求されるデジタル社会。それでも人と水との関係は大きく変わっていない。身近でありながら、とても大切なものだ。ヤコブセンがVOLAで成し遂げたこともそこに通ずるような気がする。


2020年に発売された新色「Exclusive Color」の立水栓。ブラッククロム(66,750円)、カッパーとゴールドは受注生産品 ※表示価格は税抜価格
2020年に発売された新色「Exclusive Color」の立水栓。ブラッククロム(66,750円)、カッパーとゴールドは受注生産品※表示価格は税抜価格

セラトレーディング

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