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Japan Home & Building Show 2019

2020.01.20 | INFORMATION

2019年11月13日(水)~15日(金)に、東京ビッグサイトで住まいの建材、部材、設備に関する専門展示会「Japan Home & Building Show 2019」が開催された。同展を構成する展示会の一つ「ジャパンホームショー」では、多様な出展ブースの他、セミナーを中心としたイベントも行われ、14日と15日に、商店建築社がコーディネーターを務めた、建築やインテリアデザインに関連するトークショーも注目を集めた。

1日目のテーマは「これからの空間デザインは、どんな『居場所』をつくっていけばよいのか~サイエンスとデザインの観点から~」。建築家の山﨑健太郎氏(山﨑健太郎デザインワークショップ)と、鈴木毅氏(近畿大学 建築学部 教授)が登壇し、今の商空間における「居場所」と捉え方とつくり方が議論された。



初めに、ナビゲーターの塩田健一(月刊『商店建築』編集長)が山﨑氏に対し、普段の仕事の中で「居場所」について意識しながら設計しているか尋ねると、「常に人が主役になる空間をつくりたいと考えている。今の商業の主流はユーザー主体の空間づくりであり、ユーザーが空間を使いこなし、主体的に居場所を獲得していくような空間をいつも模索している。かなり感覚的にデザインをする部分もあるため、分析をして意図的に心地良い居場所をつくれるか興味がある」と話す。



一方、鈴木氏は30年に渡って「居場所」や「居方(いかた)」について研究をしてきたという。「東京の都市には居場所が少なく、人が居る情景を扱う方法論が探れないかと、世界のさまざまな場所でさまざまな居方を収集と研究をしてきた。居方とは人がどのように居るかということ。そしてその人自身がどう感じているかだけでなく、その人も含めた周りに生まれる関係性が大事な要素になる」と鈴木氏。



トークショーは、山﨑氏のこれまでのプロジェクトや、鈴木氏が収集したさまざまな居方の写真を見ながら進行していく。特にオーディエンスの興味を引いたのが、山﨑氏が設計を手掛けた「ビジョンパーク」。「視覚に関する診療や研究、治療、リハビリなどを行う医療施設のラウンジ。目に障がいのある人の方が楽しめる空間を目指して、マテリアルや手がかりとなる造作など、視覚に頼らずに空間を認知できるレイヤーを複数重ね、『思い思い』『惚ける』『打ち込む』といったさまざまな『居方』を創出した」と山﨑氏。



その空間に対し鈴木氏は「にぎわうことだけが、人の集う空間のつくり方ではない。個人それぞれが思い思いの過ごし方ができて、他者のいる風景も自分の居場所の一部として楽しめるような空間が、これからますます求められるようになるのではないか」と語った。




会場の様子
会場の様子


続いて、トークショー2日目のテーマは「sinato 大野力が教える、 これからのオフィス設計手法 〜ABW、ラウンジ、グリーン~」。建築家として商業施設からオフィスまで幅広い空間を手掛ける建築家・大野力氏(sinato)が、自身の設計事例を通して新たなオフィスづくりのアイデアを示唆した。



大野氏が設計した東京・目黒の「アマゾンジャパン合同会社」では、複数の部門と多様な働き方をする従業員の受け皿となりながら、新しい働き方を誘発するような空間づくりを展開する。



オフィス設計の手順について大野氏は次のように語る。「デザインサーベイを重視していて、ここではユーザーである社員のアンケート、各部署の部長へのインタビュー、経営陣へのインタビューを経て、40〜50人のユーザーコミッティーをつくって意見交換をしながらコンセプトを固めた」と話す。常駐する人からほとんど会社に居ない人などを想定し、大きく5種類の席の形態を決めて、いくつものダイアグラムを当てはめて検討しながら「街を計画するようにゾーニングした」という。



大野氏がオフィス設計を手掛けた「USEN-NEXT GROUP」。執務スペースやミーティングなどの人々がやり取りをする風景が複数のレイヤーとなり見えてくる空間づくりによって、企業のコミュニティを感じさせる
大野氏がオフィス設計を手掛けた「USEN-NEXT GROUP」。執務スペースやミーティングなどの人々がやり取りをする風景が複数のレイヤーとなり見えてくる空間づくりによって、企業のコミュニティを感じさせる



大野氏は建築家がオフィスづくりに加わる意義について、「仕事の内容に合わせて働く場所を選ぶABWという考え方が広まる中で、その企業の人々が結果的に『オフィスで仕事をするのが一番、気持ちが良い』と思えるような空間づくりが必要とされていると思う。



ただそういった空間は問題解決視点の延長上では生まれにくい。建築家の建築ドリブン、デザインドリブンな視点が加わることで新しい働き方を支えるオフィスができるのではないか」と語った。



トークショーには両日とも、設計者や建築関連のメーカーなどこれからの空間づくりに意欲を持つ人々が数多く訪れ耳を傾けていた。

DAY1のゲスト

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山﨑健太郎
山﨑健太郎デザインワークショップ
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鈴木 毅
近畿大学 建築学部 教授

DAY2のゲスト

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大野力
sinato

ファシリテーター

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塩田健一
月刊『商店建築』 編集長

山﨑氏が設計した神戸の「ビジョンパーク」。視覚に関する総合的な医療施設のラウンジとして、目に障がいのある人も、そうでない人も思い思いに過ごせる居場所が計画されている
山﨑氏が設計した神戸の「ビジョンパーク」。視覚に関する総合的な医療施設のラウンジとして、目に障がいのある人も、そうでない人も思い思いに過ごせる居場所が計画されている

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