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オフィスキッチンを成功に導く、 四つのタイポロジー 第4回 コネクト型&ノード型

2019.11.13 | REPORT

鼎談「オフィスにおけるキッチンの可能性を考える」をきっかけに、LIXIL、若原強さん、オープン・エーの3者が共同研究を行い、オフィスキッチンを四つのタイポロジーに分類して分析した。今回は、「コネクト型」と「ノード型」オフィスキッチンについて、二つの実例を紹介する。

コネクト型の特徴は、異なる執務スペース(部署)を結ぶ動線上にキッチンを配置することだ。特に大きな企業では部署ごとの壁ができやすく、フリーアドレス化しても部署ごとでコミュニケーションの輪が閉じてしまうことも多い。そこで偶発的な出会いを生み出すため、社員が訪れることの多い場や動線(食堂やトイレ)などに溜まりをつくり、コミュニケーションを促したプランである。



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■CASE7 三菱地所SPARKLE

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各部署の流動性を高め「偶発的な出会いが組織の原動力を生む」をテーマに企画された三菱地所の新オフィス。フリーアドレス化計画の中核施設として動線のハブに設けられたのが、カフェテリア「SPARKLE」である。
フリーアドレス化され、個人のデスクを廃止したオフィスは、各階を開放的なストリップ大階段でつなぎ、社員の流動性を高めている。更に部署間の接触を多くするため「SPARKLE」はエントランスや階段といった各動線の中継点に設置された。おかずを自由に選べる健康的なデリや手軽なカフェを用意し、打ち合わせに便利なベンチボックス席、偶発的な出会いを生むビッグテーブル、1人で食事を楽しめる窓際のカウンター席など、多様なシチュエーションを設けている。以前のオフィスは部署ごとに部屋が分かれ、社員食堂もなかったため社外で個々に昼食をとっていた。一方SPARKLEでは、他部署の社員同士がランチをとりながら気軽に会話でき、セッティングに時間がかかる打ち合わせも数分で済んでしまう。
デリコーナーでは、キッチンの前に温菜4種類、冷菜4種類、サラダが並べられ、プレート小250円、大350円でおかず盛り放題とあり人気が高い。特に野菜類が豊富にとれると好評だ。他に丼ぶり、カレー、麺類、定食など社食的メニューもあり、1日400名程の社員が利用(ランチ時にはグループ企業の社員にも開放される)。ビーガンフェアなど、イベントに合わせた特別メニューを企画し、サイネージで告知して興味をそそる工夫もしている。カフェは無料の朝食を提供し早朝出勤の促進にも役立っている他、夜は酒類も出して、打ち上げやパーティー会場として利用されることもある。
都心のオフィス開発を手掛ける同社にとって、ここは先進的なオフィスをプレゼンするモデルケースにもなっている。時には社長や役員もビッグテーブルで一緒に食事をとり、写真でしか知らなかった経営陣を身近に感じるようになったという声や、異なる部署間の意思決定が早くなったという声も聞かれた。


カフェコーナー。サンドイッチなどの軽食も取れ、早朝出勤促進のため時間限定で無料で朝食を提供している。
カフェコーナー。サンドイッチなどの軽食も取れ、早朝出勤促進のため時間限定で無料で朝食を提供している。


SPARKLEに隣接するラウンジは、社員だけが利用できるスペース。フリーアドレスのデスクであり、ここにランチを持ち込む社員もいる。支払いや出入りのセキュリティーは指紋認証で行っているので、サイフを持ち歩くこともない。
SPARKLEに隣接するラウンジは、社員だけが利用できるスペース。フリーアドレスのデスクであり、ここにランチを持ち込む社員もいる。支払いや出入りのセキュリティーは指紋認証で行っているので、サイフを持ち歩くこともない。


人気の高いデリコーナー。
人気の高いデリコーナー。


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「ノード型」オフィスキッチン


独立した執務空間の結節点としてキッチンを設ける「ノード型」。複数フロアで構成あるいは分棟型のオフィスに向き、外部に開いたよりパブリック性の高い配置だ。一般の飲食利用を組み込むことで、食堂、フリーアドレスのデスク空間、イベントホールなど多機能なスペースとして活用しながら、運営を維持できる可能性が高まる。


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■CASE8 tiny peace kitchen

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コミュニティビル「Nagatacho GRiD」(CASE6 参照)1階に開設された食堂「tiny peace kitchen」は、ガイアックスの社員食堂、フリーアドレスの機能と、一般の人が利用できる食堂を兼ね備えた施設である。飲食店と同レベルの充実した広いオープンキッチンを備え、10名以上のスタッフが運営にあたっている。店内でのランチ営業の他、ビル2階へのケータリングやランチ弁当の販売で1日300食程を提供しながら、ガイアックスで開催される数百人規模のパーティーのケータリングも行っている。
海外の大手IT企業には、本格的な飲料施設を備え質の高い料理を提供する所もあるが、その運営費は膨大なものになる。その一方tiny peace kitchenはガイアックスとは別会社になっていて、社員の1人である荒井智子さんのアイデアから生まれた。荒井さんは、社会人が家庭的な食事をとれる飲食店が少ないことに疑問を持ち、事業を興すため独立したいと上司に相談したところ、社内起業をすすめられた。
そこで家庭的な癒やしを感じながら健康な食事をとれるtiny peace kitchen を創業。地産地消の野菜や東京産の醤油など身近な食材をつかった「やさしい経済圏」を目指して、“おかんのごはん” を毎日食べようをコンセプトとした日替わり定食や発酵カレーを提供している。昼時は外部からの客でいっぱいになってしまうため、Nagatacho GRiDでも食事をとれるようケータリングを始めたそうだ。荒井さんにとってガイアックス社員の需要は安定した経営のために不可欠で、ガイアックス側も少ない負担で充実した社員食堂を設けることができた。
店内はオープンな雰囲気で、イス、テーブルは可動式でワークショップやパーティーなど用途にあわせて変更できる。コンセントやWi-Fiを完備しフリーアドレスのデスクや打ち合わせにも利用可能。リモートワーカーの多いガイアックスにとって、不定期に来る社員がフレキシブルに活用できる空間ともなっている。独立した社員食堂を維持するのが難しい規模の企業にも実現可能な、さまざまな用途に無駄なく活用できる新しいタイプの社食といえるだろう。


定食はご飯と味噌汁、日替わりの主菜、副菜3品を自分の好きなだけとれる。1段高くなったオープンキッチンの中では、懸命な調理が進んでいる。実際に惣菜がつくられる姿を見ることで、調理の大切さを感じ取って欲しいそうだ。
定食はご飯と味噌汁、日替わりの主菜、副菜3品を自分の好きなだけとれる。1段高くなったオープンキッチンの中では、懸命な調理が進んでいる。実際に惣菜がつくられる姿を見ることで、調理の大切さを感じ取って欲しいそうだ。


キッチンは、本格的な設備が整えられている。
キッチンは、本格的な設備が整えられている。


コミュニティビル「Nagatacho GRiD」1階に入り、外部にも開かれている。
コミュニティビル「Nagatacho GRiD」1階に入り、外部にも開かれている。

 


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