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オフィスキッチンを成功に導く、 四つのタイポロジー 第2回 リニア型
2019.10.24 | REPORT
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鼎談「オフィスにおけるキッチンの可能性を考える」をきっかけに、LIXIL、若原強さん、オープン・エーの3者が共同研究を行い、オフィスキッチンを四つのタイポロジーに分類して分析した。今回は、「リニア型」オフィスキッチンについて、実例を紹介する。
リニア型の特徴は、執務スペースからもキッチンがよく見えて、誰が何をしているかが見えることだ。例えば給湯室の会話は密談風になりがちだが、ここでは発展的な会話が生まれやすい。企業姿勢を体現したシンボリックな場所となり、会社を訪れたゲストの興味をひき話のきっかけをつくる。キッチン自体は、本格的なキッチンから給排水設備のないドライキッチンまで、さまざまなタイプがあった。
■CASE1 Under Construction / Un.C.
馬場正尊さんが主宰する設計事務所オープン・エーの事務所兼シェアオフィスである。オフィスのエントランスからもよく見える場所に、大きなアイランド型キッチンが鎮座し、シンボル的な存在になっている。このオフィスにはオープン・エーの社員と、シェアオフィス利用者が同居し、コミュニティマネージャーがオフィスの管理を行っている。キッチンをつくった目的は「コミュニケーションの活性化」だという。
アイランド型キッチンのサイズは幅4000㎜、奥行き1200㎜。腰はコンクリートブロック製で、天板はステンレス製。オフィス側は高さ1100㎜とハイスツールで座るのに適した高さで、カウンターにノートパソコンを置いて仕事する利用者も多い。1200㎜という深い奥行きは、オフィス側から仕事をする人と、調理側で作業する人が、互いに心地良い距離感から割り出されている。
調理スペース側は配管のために床を200㎜程ふかしたため、カウンターの高さは調理に適した900㎜になる。この段差は意外な効果を発揮し、調理側に立つとオフィス全体が見渡せて、社員や利用者の状況が一目で分かると馬場さん。コーヒーを淹れている社員に話しかけて仕事の進捗を聞いたり、執務スペースとは異なったスタンスで声をかけられる。
シェアオフィス利用者にも好評で、このキッチンを見て入居を決めたという人もいた。IHクッキングヒーターやコーヒーミル、炊飯器、オーブンレンジ、製パン機などの調理器具を備え、本格的な調理が可能だ。入居者の一人である料理が得意なカメラマンが皆に腕をふるまったり、4~5人で一緒に調理したり、利用者同士のコミュニケーションの促進にも大きく役立っている。
■CASE2 KOKUYO 東京品川SSTオフィス
広大なワンフロアに展開した「KOKUYO 東京品川SSTオフィス」は、品川駅に近い「品川シーズンテラス」の18階にある。2017年10月に現在のオフィスに移転し、オフィスファニチャーや文具に分かれた各セクションのコミュニケーションを円滑にするため、フリーアドレスのオープンなオフィス空間を実現。6割以上を共有スペースとしている。
一辺が90m程の正方形プランで、ビッグテーブルをシェアする執務スペース、ラウンジのようなイスを置いたリラックスエリア、テント状に囲んだ集中スペース、オープンなビッグテーブルの会議スペースなど、さまざまなワークスペースが揃い、仕事をする場所を選ぶことができる。
そのうち東西をつなぐ北側のエリアを「プール」と名付け、コミュニケーションのハブとした。その人通りの多いメイン通路に設けられたのが、コーヒーカウンター「DRIP&DROP」だ。
ここは社員自らが豆をひき、ハンドドリップでコーヒーを淹れるための専用カウンターで、オフィスコンシェルジュのカウンター横に設置されている。広い打ち合わせスペースからもよく見える場所にある。
社員達はここで平均10分程かけて、コーヒーを淹れる。その間、他部署の社員に声をかけられ世間話をしたり、サイネージに表示される経済トピックについて話したり、会議や打ち合わせからは生まれにくい、社員同士のインフォーマルな会話やアイデアが生まれ、課題解決のスピードアップにもつながっている。
キッチンの機能としては給排水設備のないドライキッチンであるものの、コーヒーという求心力の高いアイテムと配置の工夫によって、人の集う場を創出した例である。部門を超えて皆が気軽に集まれ、鮮度の高いウェットな情報を交わせる貴重なスペースとなっている。
■CASE3 Tigerspike
オーストラリア・シドニーで創業した、デジタル・プロダクト開発会社タイガースパイクの日本オフィス。約440㎡のオフィスのうち、4分の1のスペースを、ゆったりとしたラウンジやキッチンコーナーにあてている。
キッチンはIHクッキングヒーターを備えた本格的なものだ。幅は4400㎜で、複数人での調理にも対応する。その他にもコーヒーサーバーを設置したカウンターや、マルシェを思わせる可動式屋台風カウンターといった3カ所の食の拠点を配置し、まるでピクニックのような人工芝を敷いたスペースなど、従来のオフィスのイメージを払拭。ゲストにも強い印象を与えている。
「良い環境と良い文化があれば、良い人が集まり、お客さんも集まってくる」という考えのもと、オーストラリアや他の拠点で行っているプログラムを日本にインストールしつつ、日本独自のものに変化させている。例えば、隔週金曜日の「フライデーランチ」では、ランダムに選ばれた3名の社員が全員分のランチを調理する。料理ができると社員達は思いおもいにキッチンや人工芝、ソファに集まってくる。また「ランチ&ラーン」の取り組みでは、スタッフがランチを食べながら自分の趣味や気になる話題についてプレゼンを行う。
こうした食を中心としたプログラムが、普段は外出が多く、なかなか顔を合わせられないスタッフ達の貴重なコミュニケーションの場になっている。
次回は、共有スペースにキッチンを設置した「コモン型」オフィスキッチン3例を紹介する。
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