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100年続く定番の家具をつくる

2019.09.09 | INFORMATION

「工芸の工業化」。マルニ木工が創業よりモットーとして掲げる言葉だ。木工家具は職人の手作業の部分が多く、コスト高になりがちだ。それを工業化することで少しでもより多くの人に届ける。その思いは長い歴史を歩んできた今の同社でも変わらない。



1928年、広島・宮島出身の創業者が木に魅了され、近代的な産業として木工業を興したいという夢から昭和曲木工場として家具づくりが始まった。1933年にはマルニ木工に改称、日本の住宅文化を豊かにすることを目指し、イスを始めとした木工家具の製造を本格的に進める。戦後は日本の復興そして経済成長に歩調をそろえるように、家具メーカーとして躍進、成長を重ねた。1968年に発売した様式家具のシリーズ「ベルサイユ」は、日本の家具としても空前の大ヒット製品となり、なお現在も販売が継続されている。バブル期には東洋一の家具メーカーとも言われ、総合的な家具商社としての立ち位置ともなり、社名をマルニとした。



「HIROSHIMA アームチェア」あらゆる場所で使えることを想定したシンプルで精緻な構造。サイズ:w560×d530×h765(sh425)㎜。価格:93,000円
「HIROSHIMA アームチェア」あらゆる場所で使えることを想定したシンプルで精緻な構造。サイズ:w560×d530×h765(sh425)㎜。価格:93,000円


しかしバブル経済崩壊後、いわゆるモノの売れない時代が訪れ、規模を拡大する事業から、成熟型社会に応じたものづくりへ変換した。マルニ木工と社名も戻した。



2005年の「nextmaruni」という世界の12組のデザイナーと同じテーマで家具をつくるプロジェクト。ミラノサローネでの発表など、さまざまな外部の人たちとの交流や意見があり、そこでの深澤直人氏との出会いが同社を大きく変えることとなった。「世界の定番をつくろう」と深澤氏の呼びかけに本気で応えた結果である、2008年に発表された「HIROSHIMA」。故地である広島の名を付けられたアームチェアを始めとしたシリーズだ。職人技と工業化の融合を駆使し、デザイナーと職人が膝をつき合わせてつくられた。HIROSHIMAは21世紀のマルニの代表商品となり、国内外で人気を博した。ノーマン・フォスターの設計による米・アップル本社キャンパス「Apple Park」では、年間の生産量に匹敵するような量が採用された。



ロサンゼルスのBlue Bottle Coffeeでは、HIROSHIMAアームチェアとHIROSHIMAチェアのブラック塗装品を納入。HIROSHIMAチェアは、ブルーボトルコーヒー創業者のジェームス・フリーマン氏の自邸でも使われている
ロサンゼルスのBlue Bottle Coffeeでは、HIROSHIMAアームチェアとHIROSHIMAチェアのブラック塗装品を納入。HIROSHIMAチェアは、ブルーボトルコーヒー創業者のジェームス・フリーマン氏の自邸でも使われている


さまざまな技術の積み重ねと、つくり手の美意識が隅々まで行き届いた木の家具。「100年経っても『世界の定番』として認められる木工家具をつくり続ける」をビジョンとして、広島から世界へものづくりを発信し続ける。同社では、マルニ木工100周年の日、2028年5月22日に本社の新社屋をお披露目することをマイルストーンとしている。同社工場および広島を、世界中のデザイン好きや家具好きが目指す場所の一つにしたいと意気込む。




東日本橋にあるmaruni tokyo。「ものだけでなくアンビエントないい雰囲気を醸し出す空間、『こういう暮らしがしたいな』という生活のヒントになるような場所を目指し、温かみのあるインテリア空間をつくりました。」(デザイナー・深澤直人)
東日本橋にあるmaruni tokyo。「ものだけでなくアンビエントないい雰囲気を醸し出す空間、『こういう暮らしがしたいな』という生活のヒントになるような場所を目指し、温かみのあるインテリア空間をつくりました。」(デザイナー・深澤直人)

マルニ木工

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