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日本人の美意識である“陰翳礼讃”を体現した光と陰影のユニットバスルーム
「i-X INTEGRAL(イークス インテグラル)」2019.08.05 | INFORMATION
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“ストレスオフ”をコンセプトに2006年に提案開始され、翌2007年に発売されたパナソニックのホテル・マンション向けユニットバスルーム「i-X(イークス)」。
わずか15㎜に整えられた隅と縁。50×10㎜のパターンの組み合わせで、どのサイズでも割り切れる床面寸法。完成度を高める白で統一されたカラーリング。美しい部屋に置かれた、アイコンとなる美しい浴槽。汚れをはじき、肌に優しく触れる独自の有機ガラス系新素材。酸素を含んだミクロの泡を発する酸素美泡湯……。
パナソニックが2003年から推し進めてきた“バス革新プロジェクト”により、プロダクトデザイナー、深澤直人氏との共同で企画・デザインされた「i-X」の登場は、それまで新機能を追加することのみで進化してきたユニットバス業界の常識を根底から覆す革新的な出来事であった。さらに、それから7年が経過した2012年、パナソニックでは、“もう一度驚いてもらいたい”をキーワードに、再び新たな“バス革新プロジェクト”へと邁進する。この“美しい防水部屋”を“新たな何かと融合”し、まったく新しいデザイン空間をつくるにはどうすれば良いか。単なる高級ではなく、現代の日本に生きる人々に上級と認められる価値とは何か。徹底的に議論し、研究を重ねた。
そこで開発チームが導き出した答えが、「i-X」に新たなデザインを纏わせることだった。当時は2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、和食が無形文化遺産に、富士山が世界文化遺産に登録されるなど世界中から日本が注目を集めていた頃でもあった。開発チームは、まずは、“お風呂は和室か洋室か?”から問い直し、シンプルさを追求した「i-X」は、ミニマリズムや禅の世界にも通じる。お風呂とは和室であり、その上でさらに隅と縁が整えられ、一坪空間でありながら光と陰影とが織りなす広大な宇宙を内包する国宝、利休の待庵が持つ精神性と重ね合わせ、茶室であると位置づけた。
「i-X」に余計なものを足すのではなく、「i-X」の完成された真っ白な世界観があるからこそできる次の一手。日本人独自の繊細な美意識である“陰翳礼讃”をデザインし、「i-X」へと施す。こうして、新ブランド「i-X INTEGRAL(イークス インテグラル)」のプロジェクトは、本格始動していった。
古来より、日本では建築と光は同時に考えられてきた。「i-X INTEGRAL」には、その日本建築と光の関係性が凝縮され、注ぎ込まれている。例えば、内部空間へと光を取り込むレフ板の役割を果たす龍安寺の石庭(京都)や、池が反射する日の光を和紙の天井が受け空間に拡散する掬月亭(高松)、川面の光を受け網代天井がそれを拡散する臥龍山荘(愛媛・大洲)など。また、日本人がそもそも持っていた光に関する豊かで繊細な感受性は谷崎潤一郎の“陰翳礼讃”にも丁寧に描かれている。
住宅において建具や床の間、囲炉裏、坪庭というエレメントは“空間”と“光”の関係を吟味してつくり込まれてきた。照明器具においても灯台や行灯、ランプという進化を経ていくが、基本的にあかりは常に人に寄り添ってきた。だが、やがて電気が発明されると、照明は人ではなく建築に付随するようになった。
戦後の“明るいことは豊かなこと”という風潮の中、シーリングライトの誕生により、空間を明るく均一に照らすことを良しとする時代を迎え、日本の住宅から陰翳は消えてしまった。しかし、近年改めて空間におけるあかりの重要性が見直されてきており、“空間”と“光”の関係性を考慮した“照明計画”が当たり前となってきている。照明は器具だけでは完結しない。光を受ける床・壁・天井があってこそ、光を認識できる。そんな今日の居室では当然のこととなっている“光とそれを受ける面”の関係を考慮した照明計画という考え方により、浴室を“居室”へと昇華させたいという想いが「i-X INTEGRAL」には込められている。
光と、そして光の当たらない場所に生まれる陰、光によって作り出された暗部である影とを「i-X」に落とし込む。プロジェクト始動から2年後の2014年、バスルームにも照明計画を施した「i-X INTEGRAL」は、ついに市場へと送り出された。
点が連なり線となる。線が連なり面となる。面が連なり立体となる。あかりの原点である点と線と面。上部の大きな陰とシャープな強い影を生む点の「ピンホールLED」、光と対称的な陰と、柔らかな影を生む線の「フラットラインLED」、方向性のある陰と優しい影を生む面の「フラットパネルLED」。「i-X INTEGRAL」では、器具ではなく、あかりの形がデザインされている。
そして、そのあかりを受けるのが面である。「i-X」では連続印刷された壁柄が採用されていたが、「i-X INTEGRAL」の壁柄は一枚一枚インクジェットで刷られている。そのシートをベースとなるメタリック鋼板と組み合わせた独自の「リフレクトパネル」によって、あかりを受け、煌めく美しい壁が実現されている。柄は、点、線、面、それぞれのあかりとの相性を考慮し、開発されている。
点のあかりによる強い陰影が映し出され、見る角度によって雲母刷りの柄の表情を変化させる小紋柄の「CAMELIA」。フラットラインLEDの線のあかりが、繊細な文様を上から下へと変化させる透かし柄の「ELEMENT」。面のあかりには絣柄の「DEEP」を。上部は薄く、下に行くにつれて濃くなっていくグラデーションが、天井から降り注ぐ光に呼応する。
「CAMELIA」は、葡萄、青丹、鉄紺、琥珀、墨の5アイテム。「ELEMENT」は、白銀、黄金、漆黒の3アイテム。「DEEP」は瑠璃、紅紫、紺碧、暁色、濡羽の5アイテム。2016年には、自然界の情景や現象をモチーフにし、金属工芸である鍛金技法のテクスチャーを採用した月白、夕月夜、淡香、香霞の「AERIAL」が追加発売され、全17アイテムがそろう。これらの壁柄と、3種類の光との組み合わせによって、思い思いの“陰翳礼讃”な浴室空間の構築が可能となっている。
この他、点検口を震わせて音を出す「シーリングバスオーディオ」や、天井にバスタブ型のピンホールライトの穴を掘り、そこから照射される極小のあかりで、お湯にゆらめく光と影を生み出す「水盤LED照明」など、「i-X INTEGRAL」の世界観をより豊かに、より情緒的に拡充させる機能も用意。さらに、シャワータイプの「i-X INTEGRAL SHOWERROOM」も登場している。
“美しい防水部屋”をプラットフォームに、まったく別の方向から価値観を提示したパナソニックの「i-X」と「i-X INTEGRAL」。この2つのブランドは、お互いの、そして商品とプロモーションとの相乗効果によって、今日もなおマンション、そしてホテルの客室へと次々に導入され続けている
パナソニック
- TEL. 0120-878-709
- URL. http://sumai.panasonic.jp/bathroom/i-x/