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傷に強く美しさが長持ちする建装材向け化粧シート「Smart NANO(スマートナノ)」シリーズ

2016.08.01 | INFORMATION

日本の印刷物の水準の高さは多くに知られることだ。精細で鮮明、あらゆる分野で発揮される高い表現力と安定した高い品質。繊細で丁寧な仕事を得意とする日本人的スキルが最も生かされた分野の一つではないだろうか。



そうした日本の印刷における雄といえる凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)が、印刷・製版技術をコアにしつつ、紙の印刷物に留まらずICTなど最先端分野を始め多角的に技術・事業を展開していることも、また多くの人がご存知のことだろう。



では、凸版印刷で建装材事業を手掛けていることについてはどうだろうか。実はその歴史は長く、1958年にはメラミン化粧板用の印刷、製版を始めている。住宅の工業化が進んだ1970年代には内装ドア向け塩ビ(PVC)フィルムや壁紙などで生産を伸ばした。



建装材を取り扱う環境デザイン事業部では、化粧シート類が主力製品となっている。フィルムや紙などに木目や石目などを印刷したものだ。特に住宅建材を中心に需要が高く、家具・建具を始め、壁・床材と用途も広がっている。あらゆる色味・絵柄(樹種など)が表現できるのはもちろん、近年はその“再現度”も非常に高くなっていて、エンボスなどの加工で繊細な凹凸や木質のリアルな表面を表現しているものもある。視覚のみで本物の素材との違いを見分けるのは難しいほどだ。



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同社では化粧シート「101エコシート」を始めとして、不燃ボードやアルミ押し出し材を基材として一体化した製品などオリジナルブランドで製品展開もしている。一方、いわゆるOEMというかたちで住宅メーカーなどへフィルムの供給実績も非常に多い。



“サーフェスデザイン”であるがゆえ、つまり意匠やデザインは印刷という特性上、自由度が高い。 自在な選択肢の手掛かりとして、同社ではマーケティングリサーチにも力を入れ、 Color(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)という視点で市場の動向やニーズの変遷を見据えて、顧客に対してトレンド提案もしている。住宅のみならず、店舗、海外動向も踏まえた重厚なデータの集積だ。ショールームではそうしたリサーチの結果もビジュアル化してプレゼンテーションしている(写真参照)。



同時に、これは化粧シートが求められる要因を考えれば必然ともいえるが、安全性や耐久性、環境性といった性能向上には注力してきた。特に企業の社会的責任(CSR)の範疇が広がってきた昨今では、建材でも生産からエンドユーザーの利用そして廃棄まで、周辺環境に与えるさまざまな影響を鑑みた製品づくりが求められている。これは、住宅産業や公共施設などに限らず、商業施設でも同様のことが言える。店舗といえども意匠や機能だけを優先して素材を選ぶ時代は過去のものになったといっていい。



今年6月、凸版印刷では「Smart NANO」シリーズを発表した。「超臨界逆相蒸発法」と呼ばれるナノ化技術を用いることで従来の化粧シートに機能を付加するもので、従来製品の2倍の耐傷性や高い耐汚性を実現した。



トレードオフではなく、意匠や質感などは従来製品のものを維持したまま性能だけが向上したかたちだ。東京理科大学発のベンチャー企業、アクテイブ株式会社との共同開発で、同社と凸版印刷は建装材部門で独占提携契約を結んでおり、今回の技術は建材としての化粧シートにとってブレイクスルーになり得る。



凸版印刷環境デザイン事業部建装材技術本部部長・岩本昌浩氏は、「(アクテイブ社の超臨界逆相蒸発法と)弊社が培ってきた高解像度の印刷技術や微細加工技術と非常にマッチングが良かった」と話す。8月から商談が開始されるのは、床材用シートだが、これは今回付加された耐傷・耐汚性能が最もパフォーマンスを発揮する領域だからだ。



床材にとってクレームにつながりやすいのが、表面に傷が付くこと。製造時、流通時、施工時、そして使用時とあらゆる場面で対策が求められる。素材自体の性能向上は、目に見えないコストも低減できることになる。



構成図 上二層に超臨界逆相蒸発法によるナノカプセルを添加 上からUVコーティング層、オレフィンクリア層、木目印刷層
構成図
上二層に超臨界逆相蒸発法によるナノカプセルを添加
上からUVコーティング層、オレフィンクリア層、木目印刷層


従来品とSmart NANO技術使用製品の比較 Smart NANO技術を使用した床用シートは、従来製品と比べて大幅に硬さと耐傷性能が向上した。
従来品とSmart NANO技術使用製品の比較
Smart NANO技術を使用した床用シートは、従来製品と比べて大幅に硬さと耐傷性能が向上した。


この技術について岩本氏は「弱点はない。メリットばかりです」と力説する。コストも大幅には変らない。従来品に近い価格での提供を目指す。今後はナノ化した素材をどのように化学反応させるかによって、CO2削減や不燃性など新しい機能を付加することも予定している。「(OEMでは)お客様の要望によって実現していきたい」(岩本氏)。



凸版印刷はこの技術を床材のみならず、内外装の多彩な分野で国内外に展開していく計画だ。日本らしい繊細な印刷技術と最先端の日本のベンチャーによるナノテクノロジーの融合から生まれた「Smart NANO」シリーズ。今後建装材の機能性を語る上で欠かせない存在になるのではないだろうか。

凸版印刷

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