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最前線で活躍するデザイナーの仕事に見る
ホテル、カフェ、オフィスにおける新しい価値創出2019.01.07 | REPORT
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2018年11月、建材やインテリア関連の見本市「Japan Home & Building Show」において、商店建築セミナーが開催された。
建材見本市「Japan Home & Building Show」は、建材やインテリア製品、構造材・部材、設備に関連する日本最大級の見本市であり、
デザイナーや建築家、設計士、ディベロッパーなどが訪れる。セミナーは2日間に渡って行われ、月刊『商店建築』 編集長・塩田健一が聞き手となり、
窪田茂氏(窪田建築都市研究所)、藤岡麻実氏(ゲンスラー)がそれぞれが登壇した。
多様化するライフスタイルを
読み解くような空間づくり1日目に登壇した、建築家の窪田茂氏(窪田建築都市研究所)は、カフェやホテル、ショールーム、クリニックといった商業空間からプロダクトデザインまで幅広くを手掛ける。セミナーでは「街を盛り上げる大らかなホテル、カフェ、オールデイダイニングの設計戦略 ~プランニングと世界観づくりに迫る~」をテーマとして、窪田氏が手掛けた最新の事例が挙げられた。
神奈川県川崎市の工業地帯に建つ「The WAREHOUSE」は、ライフスタイルホテルやレストラン、ショップが設けられた複合施設。単純な商業施設の機能だけではない、地域性やそこに集う人々の属性を汲み取った“余白”や“空気感”が漂うデザインが印象的だ。
「羽田空港に近く、海外からの利用者が訪れるほか、川沿いにあるためリバーサイドアクティビティの提案や、地域コミュニティに関わるような施設づくりが特徴。ラグジュアリー感の中に、古材やコンクリートのラフな仕上げが融合し、世界のホテルのトレンドに親しみやすいデザインを取り込んでいる。建築や店舗空間をつくる際、その区画だけでなく、そこから見える風景や行き交う人、隣にある店など周りとの関係性をいつも意識している。セミナーテーマにある“大らかな”という言葉にも通じるが、今の商業空間には色々な場所で多様な人が、自由な使い方をできる空間づくりが求められていると感じる。その自由なシーンをいくつも考えながら、更に新しい使い方が生まれるような空間を提案したい。窪田建築都市研究所という名称の通り、一つひとつの店、個人の空間から都市が生まれていく可能性を感じながら空間づくりに取り組んでいる」(窪田氏)
2日目には世界中でオフィスデザインを手掛けるゲンスラーのデザイナー・藤岡麻実氏が登壇。アメリカ・サンフランシスコのベイエリア周辺で同社が手掛けた事例や、藤岡氏らが担当した日本のオフィス事例を通して、オフィスデザインの今が語られた。
「サンフランシスコの企業のオフィスを見ると、ファシリティマネジャーの仕事が単純な施設の管理だけに留まらない、人と人をつなげるような幅のあるものになっていると感じる。また、オフィスが働くだけの場所ではなく、コミュニティや学びのための場であり、店舗やホテルのような機能を持つ空間になりつつある。仕事をしている一瞬も人生の一部であり、世界のオフィスのトレンドは、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)から、ワークライフインテグレーテッド(仕事と生活の統合)に移り変わってきているのではないか」と藤岡氏。「物理的な空間、インフラを整えることで、人々の行動が変わり、企業の新しいカルチャーが生まれる」とオフィスデザインが働き方を変革していく可能性を示した。
セミナー会場には、今の空間づくりの最前線で活躍するクリエーターの視点からヒントを得るべく、デザイナーからメーカー、ディベロッパーまで多くの参加者が訪れ耳を傾けた。
セミナー会場/東京ビッグサイト 東展示棟 6ホール内 セミナー会期/2018年11月20日(火)・21日(水)
- 窪田茂(くぼた・しげる)
- 窪田建築都市研究所
- 藤岡麻実(ふじおか・まみ)
- 塩田健一(しおた・けんいち)
- 月刊『商店建築』 編集長