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香港ならではの照明器具トレードショーがもたらす テクノロジー&デザインの進化
2018.12.04 | REPORT
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「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」&「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」レポート
10 月27 日~30 日に香港コンベンション&エキシビション・センター(HKCEC)で「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」が、10 月26 日~29 日にアジア・ワールド・エキスポ(AWE)で「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」が開催された。曜日を問わず日程が固定されたイベントのため、今回は土・日曜日を挟むことになったが、154 の国および地域から約7 万3000 人のバイヤーが訪れた。また、HKCEC には37 の国および地域から2700 社が、AWE には5 の国および地域から420 社が出展。例年にも増して数多のブースが所狭しとひしめき合う中で、トレードショーがもたらすテクノロジー&デザインの進化が垣間見られた。
世界規模のマーケティングを可能にする「香港」
香港は、世界中の企業にとって中国をはじめアジアの各都市をつなぐ玄関口であると共に、中国国内の企業にとって世界に羽ばたく拠点でもある。看板照明を手掛けるChina Sign社は、約30年間、中国・上海や杭州でチャンネル文字の制作を手掛けており、中国国内で数々の海外ブランドのサインを手掛けてきた。JONAS CHAN氏は、「香港でも商業施設『K11』のサインなどを手掛けています。国外でも海外ブランドのサインを受注したいと考え、香港をベースにメンテナンスやアフターサービスに対応する企業を設立しました。『香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ』への出展は今回が初めてになりますが、国外からのお客様からの反応も良く、ブランディングにおける宣伝効果も高いと考えます」
中国やイギリスに拠点を構える総合照明器具メーカーSealite社は、「香港インターナショナル・ライティング・フェア」にブースを構え、日本を新たなマーケットとして捉え、その足掛かりを模索をしていた。家庭用照明器具を市場調査を調査を進めており、実現に向けて開発中だという。Sealite(UK)社のBen Moore氏は、日本の市場を「販路の確保を含め課題は多いが、魅力あるマーケット」と語る。
実例が増えつつあるスマートシティー&ライティング
ここ数年、「スマートシティー」を実現すべく声高に叫ばれてきた「スマートライティング」という言葉は、既に現実味を帯びたものとなっている。二つの会場内には、実績を伝える企業も多く見られた。台湾から「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」に出展したGreen Ideas Technology社は、台北市内や大学構内、漁村をはじめとしたさまざまなエリアでカメラやセンサーと一体化したライティング・スタンドが採用されており、街づくりに寄与していると説明する。同社のEric Ng氏は、「台湾のある街で花火大会が開催された際、ライティング・スタンドが通りごとの交通量を把握し、警備に対してAIで瞬時にソリューションを提案。スムーズに花火大会の終えることができました。現在、初めて設置する場所でも状況にふさわしいソリューションを挙げられるよう、更にさまざまなデータを蓄積しています」
生き馬の目を抜く会場で生まれる技術進化
「香港インターナショナル・ライティング・フェア」および「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」は、トレードショーとしての性格が強く、至る所で商談を進める様子が見られる。また、前述の通り2700社がひしめき合っており、見た目だけでは他社との差異性を感じ難い企業も少なくない。そのような中でも、一歩でも抜きん出たオリジナルプロダクトを発表しようとする企業も見られた。
中国・廈門市に本社を持つSunplan社は、LEDフィラメントで一筆書きの文字を表現した電球を製造・販売している。「love」や「home」といった文字は他のブースでも見られたが、同社では「寿」という文字を制作。Zhang Hengqin氏は、「自社工場の強みを表現するために制作したオリジナルです。ブースにはないさまざまな文字にも対応します」と語る。オリジナルの数字を制作して、ホテルの客室サインなどに使用してしても面白いのではないだろうか。
中国・江門市のJiang Men City Yi He Optoelectronics社では、LEDによるアニメーションパネルを発表。特許申請中だという。仕掛けは、四方に設置したLED照明が4層のアクリル板を1枚ずつ変わるがわる照射することで、アニメーションのように見せるというもの。Sunny Zhou氏は、「LEDディスプレイと比較して、低コストで軽量です。また、簡単に取り替えることもできます」と語る。写真の一部にもあるように、トイレのサインや広告での使用をイメージしているという。
迅速なプロダクトの具現化を可能にする出展者
少しでも他社より先を行くためには、迅速な製品化が求められる。その最たる例として挙げられるのが、中国・東莞市のTangla lighting社が発表した「Move me」だ。同製品は、LED電球の内部に仕込んだリフレクターを、磁石によって好きな角度に固定できるというもの。スイス人デザイナーのPatrick Zulauf氏がプロトタイプを手掛けており、製品化までに掛かった期間は、たったの7カ月だという。
「私自身はこのアイデアをひらめいた時からプロダクト化を考えており、Tangla lighting社のCEOであるPaul Besselinkはデザイナーと手を組み新たなプロダクトを展開したいと考えていました。私とPaulが出会ったのは、今年の3月に開催されたドイツ・フランクフルトのトレードショー『Light+Building』でのこと。すぐに意気投合して、今回に間に合わせることができました。ブラッシュアップしたりバージョンを増やしたいといった希望はありますが、この結果を嬉しく思います」
会場全体を見通すことで感じる今回のトレンド
これまで紹介したオリジナルプロダクトとは異なり、多くの出展者が販売する同様の商品を眺めることでも、今回のトレンドが見えてくる。会場で多くを確認できたのは、フルカラーのLEDネオンである。既に国内でも見られる商品だが、並べてアニメーションを表現しても良し、曲げて文字を表現しても良し、立体物に張り巡らせても良しと、デザイナーの手によりさまざまな利用方法が考えられるだろう。
そしてもう一つが、LED内照式のグラフィックパネルである。パネルの裏側にLEDディスプレイを配し、モーションを加えるというものである。例えば、ビールの広告ならば光でグラスに注がれる様子を見せたり、地球儀のグラフィックならば光で大陸部分を描き回転しているように見せるというものだ。こちらも一見すると目新しい技術ではないが、明るさの調整で細かなグラデーションが可能になるなど、デザイナーにとる新たな表現が期待される。
ますます拡張するライティング・トレードショー
今年のバイヤーの参加者数は昨年と比較して6%も上昇しており、規模の拡大傾向は来年も続くことが予想される。香港貿易発展局(HKTDC)のSheila Chan氏は、「二つのライティング・トレードショーは、HKTDCが主催する国際トレードフェアの中でも重要視すべき見本市だと捉えています。来年はスマートライティングとエコが更に密接な関係になると考えており、これらの部門をより強化していきたいと思います」
なお、「香港インターナショナル・ライティング・フェア」は、春にも開催しており、日程は2019年4月6〜9日を予定している。世界規模の照明のトレンドを感じるため、実際に足を運んでみてはいかがだろうか。
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