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木毛セメント板「レノウッド」の仕上げ材としての可能性
2018.07.09 | INFORMATION
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建築家やインテリアデザイナーが設計する空間が多様化する昨今、これまで主に下地材として使用されてきた木毛セメント板を仕上げ材として採用する事例が増えてきた。
愛知・名古屋の複合施設「グローバルゲート」の商業エリアでは、竹村工業が製造販売を手掛ける内装用木毛セメント板「レノウッド」が施設内外に使用されている。設計者に、その導入の理由と利点について聞いた。
光を受けて極立つ素材感を持ち、 内外の連続性を表現する
竹村工業が開発した「レノウッド」は、ヒノキと水、セメントのみを用いた、化学物質添加ゼロのパネル建材である。国産ヒノキの間伐材のみを採用し、人体にも優しい環境性能、そして意匠性からも注目を集める。同製品をいち早く大型の商業空間で採用した事例が、2017年10月にオープンした複合施設「グローバルゲート」だ。名古屋駅から1km程の距離の再開発エリアである「ささしまライブ24」に位置し、商業エリアの天井や壁面にレノウッドが使用された。
設計を担当した竹中工務店の長谷川寛氏と上河内浩氏は、施設のコンセプトについて次のように語る。
「グローバルゲートはオフィスやホテルを併設し、周辺には大学もあるため、商業エリアは駅から各施設への動線にもなります。商業的な効率性だけではなく、人々が快適に回遊し留まることができる、心地良い居場所づくりが求められました。緑化率が高く、共用空間もゆったりとした計画で、施設の『グリーンスタイル』というテーマに沿ったデザインを提案しています」
二つの高層オフィスタワーの間に設けられた4フロアの低層商業エリアは、主に1、2階に物販店、3階に飲食店が並び、フロアの中央が吹き抜けとなっている。いずれの店舗も共用通路に対して大きな間口を持ち、十分に採り込まれた外光と相まって、路面店のような雰囲気が生まれている。4階の屋上庭園には、畑や花壇、樹木の他、広範囲に太陽光発電パネルを設置。オフィスワーカーや施設利用者にとって、回遊性の高い「公園」のような存在となっている。
「この空間に親和性があり、環境にも配慮した建材として、レノウッドを採用しています。金属パネルに比べ、高い吸音効果にも期待しています。今回、使用したのは全てナチュラル色で、同一素材、カラーにより、空間全体の統一感を狙いました。また、前面に見せる貼り方だけでなく、異素材の背景としたり、短冊状にカットしてスリット状に配するなど、いくつかのパターンで空間に変化とリズムを生んでいます。また、レノウッドは近くで見ると木毛の微妙な表情の変化があるのも特徴で、間接光を用いた場所では特に温かみのある素材感を持った光の表情が生まれています。直接に雨が当たらない環境であれば屋外でも使用可能なため、内部の天井から軒天まで同じ仕上げとし、内外の連続性を持たせることができました」
ここでは、レノウッドの規格サイズをそのまま用いた箇所と、現場でカットして用いた箇所がある。その施工性やコスト面はどう考えたのだろうか。
「今まで用いたことのない新しい建材は、施工現場の職人が嫌がるものです。しかし、レノウッドは下地材として慣れ親しんだ木毛セメント板です。また、実際に現場で使ってみると、軽量で大判のままでも扱いやすいことや、突き付けで貼ってもジョイント部分が気にならない点など、仕上げ材としてのメリットを理解してもらえました。他の仕上げ材に比べ低コストであり、現場でカットをする作業コストは掛かりますが、全体のコストは抑えることができるのもポイントでした」
同社では、商業空間だけでなく大学施設などの設計にも、レノウッドを導入している。自然や人に優しい環境性能や空間デザインを演出する意匠性、コスト、そして施工性などのメリットから、内装材として木毛セメント板の可能性は大きい。
- 長谷川寛氏
- 竹中工務店名古屋支店設計部
設計6グループ長
- 上河内浩氏
- 竹中工務店名古屋支店設計部
設計6グループ副部長
竹村工業株式会社
- TEL. (0265)36-6111
- URL. http://www.takemura.co.jp/