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スマートライティングに舵を切った、照明器具トレードショーのトレンド
2017.11.20 | REPORT
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今年も10月27日〜30日に香港コンベンション&エキシビション・センター(HKCEC)で「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」が、10月26日〜29日にアジア・ワールド・エキスポ(AWE)で「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」が開催された。151の国および地域から約6万9000人のバイヤーが訪れたこれらのトレードショーは、昨年を超える活況を見せ、デザイナーおよびメーカーが「スマートライティング」とこれからどう向き合っていくかを示唆する内容となっていた。
香港で更なる成長を遂げるライティングトレードショー
38の国と地域から出展した2670のブースがひしめき合う「香港インターナショナル・ライティング・フェア(秋)」では、ブランドを持つ企業などで構成された「ホール・オブ・オーロラ」や省エネルギーなプロダクトやソリューションが揃う「LED&グリーン・ライティング」、商業施設向けの「コマーシャル・ライティング」、機能照明と装飾照明を扱う「家庭用ライティング」、そしてスマートライティングの世界を切り開く「スマート・ライティング&ソリューション」など、ジャンルごとにゾーンを展開。会場内ではさまざまな言語が飛び交い、各ブースでは国籍を問わずに商談をまとめていく姿が見られた。
昨年と比較すると、LEDテープライトやLEDクリア電球を扱うブースが減少し、配光特性を明示したダウンライトや細さを競うライン照明を陳列するブースが増加しているように感じた。これは、一般的なLED照明器具が更なる価格競争の域に達したことで出展に値しなくなったのに対して、よりクオリティーの高い照明器具のニーズが高まったとも言えるだろう。
ユーザビリティーを踏まえたスマートライティングの進化
そのような中、昨年と比較してより顕著に感じられたのが、「スマートライティング」の進化である。ネットワークと家電を組み合わせた「スマートホーム」のライティング版であり、センサーに反応するなどして、空間や時間にふさわしいライティングを可能にするというものだ。MEGAMAN社の展開するNeonlite Electronic & Lightingでは、ZigBeeを介して制御する「INGENIUM ZB」を進化させ、AI(人工知能)アシスタント「Amazon Alexa」と接続。声での操作を可能にした。
例えば、眠る前にベッドに潜り込んだ状態で、スマートスピーカー「Amazon Echo」に「おやすみ」と声を掛ければ、その声は「Amazon Alexa」に認識され、ゆっくりと暗くなっていくという具合だ。同社のDuncan Kwanさんは、「まだ試作段階ですが、我が家に導入しており、日々の生活の中で便利さを実感しています。スマートライティングの開発には、システムの構築だけでなく、いかに利用者のライフスタイルを快適にするかというユーザビリティーの考察が求められるのです。また、一般家庭でも普及しやすいよう、開発キットが公開されている『Amazon Alexa』との接続を採用しました」と説明する。
スマートシティーにおけるライティングの役割
「スマートライティング」の動きは、建物内外に限った話ではない。今年は五つの国と地域から245の企業が出展した「香港国際アウトドア&テック・ライト・エキスポ」では、「スマートシティー」のライティングを担う照明器具が見られた。中国のソーラー製品メーカーLEADSUN社は、ソーラーパネルにワイヤレスネットワーク、照明、カメラ、モーションセンサーなどを一体化したスタンドを展開。電気の通っていない場所でも利用可能という特徴を持ち、灌漑設備を遠隔操作するコントロールパネルなどと接続可能だ。
同社のLawson Chenさんは、「『スマートライティング』は、どのようなシチュエーションで使用されるのか、ニーズを具体的に捉えた上で開発することが求められています。シチュエーションを絞ることは、開発コストを抑えることにつながり、早期の実現につながるのです」と語る。多くの競合他社が一斉に「スマートライティング」に取り組む今、ニーズをいち早くつかみ、形にしていくことが肝要だという。
トレードショーを通して業界のボトムアップに寄与
前述した「INGENIUM ZB」の例からもわかるように、「スマートライティング」は「スマートホーム」の一翼を担うものであり、今後は照明の枠を超えた器具の開発がなされていくことが予想される。先程の「おやすみ」という言葉が、テレビやエアコンが消え、ホームセキュリティーのレベルを上げるといった複合的な命令を下すメッセージになることは、近い将来に現実のものになるであろう。その過程で、LEADSUN社のスタンドライトのように、セキュリティー用カメラなどのさまざまな機器や、メンテナンスを必要としない建材と照明器具が一体化していくことも考えられる。
この点について、主催者である香港貿易発展局のマーケティング・コミュニケーション部門マネージャーのRebecca Soさんは、「『スマートライティング』は、約2週間前に開催された『香港エレクトロニクスフェア(秋)』とも親和性が高いと感じています。ただ、エレクトロニクスとライティングの住み分けは可能だとも考えています。スマートライティングは、ソリューションが必要なものもあれば、セットアップがいらないものも開発されていくと考えているからです」と話す。
セールス部門マネージャーのKelly Maさんも、「このトレードショーには、パーツに特化した企業も多く出展しています。出展を通してニーズを知り、自社製品を進化させていく機会となるような、出展者全体のボトムアップに寄与する存在でありたいのです」と続ける。
香港は今、都市計画として「スマートシティー構想」に取り組んでおり、不動産投資熱の高さから住宅にスマートホームの設備を導入するなど、スマートライティングを実現しやすい環境にある。この街がスマートライティングの更なる進化をもたらすことで、出展企業がどのようなプロダクトやソリューションを展開していくのか、来年のトレードショーが今から楽しみである。次回の「香港インターナショナル・ライティング・フェア(春)」は、2018年4月6〜9日の会期で開催が予定されている。
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