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原料が持つ素材の個性を引き出すリサイクルガラス 
リサイクルガラス×スタジオリライト

2017.02.14 | INFORMATION

使用済みの蛍光灯などを原料とするリサイクルガラス。独特の質感や自然な表情が評価され、サインやテーブル天板、洗面ボウル、照明器具などに利用されつつある。今回、建材としての使用を提案するスタジオリライトを取材し、空間デザインにおけるリサイクルガラスの可能性を探った。

材料の成り立ち

スタジオリライトは、石川・金沢で主に電気工事業を手掛けるサワヤの再生ガラス事業部門である。15年前に蛍光灯の処理プラントを立ち上げ、「パーツを外して裸になったガラスが綺麗なので、埋め立てるのはもったいないと創業者が考えたのが、スタジオリライトの発端でした」と同社の田口貴将さんは語る。

開発当初は吹きガラスでコップや器をつくっていたが、市場規模を踏まえて建材マーケットに移行した。開発の方針は二つ。ガラスが溶けた表情など素材の個性を生かすこと。そして、なるべく廃ガラスだけで新たな建材をつくることだ。

ガラスの材質と技法

リサイクルガラスの性質は、「基本的には板ガラスと似ている」と田口さん。面に対する曲げや荷重には強いが、ピンポイントの荷重や衝撃には弱い。熱にはある程度の強さがあり、太陽光で熱割れしたり、湯飲みや熱い皿を置いて割れるようなことはないという。

最大製作寸法は、電気炉の大きさで決まる。同社には6台の電気炉があり、最大で2800×950㎜まで製作可能だ。厚みは板状のものなら50㎜程度まで製作できる。寸法精度は長さがマイナス方向に数㎜。厚みは気泡がある関係もあり、プラスマイナス2㎜程度だ。

製作技法についても知っておきたい。以下に各技法を簡単に説明する。


①キルンワーク
電気炉に原料を敷き詰めて焼成する手法。板状のものを製作することに向く。表面はざらっとした質感となる。半焼成の段階で冷却すると、大きな凹凸が生じて力強い表情となる。ブラウン管のリサイクルガラスを用いた「Bumpy-CRT-th」という製品がその代表例だ。廃ブラウン管を割る際にガラス同士が擦れ合いガラスに傷が付くため、ガラス自体にも独特の表情が生まれ、凹凸と相まって溶岩のような強い存在感を醸し出す。
複数のガラスを電気炉に入れて熱で溶かして溶着させる「フュージング」を併用することもある。溶けたガラスが流れた感じが独特の表情を生む。ステンドガラスを割り、蛍光灯のリサイクルガラスの間に溶着で挟み込んだ「Color-Chaboku」という製品がその代表例だ。水にインクを流したような表情が水墨画を思わせる。


②ホットキャスト
溶解炉で溶かしたガラスを金型に流し込んで成型する技法。ある程度の数量が求められる成形品に向く。レンガ程度のサイズが製作可能だ。石膏の割れ型を用いれば、ぬいぐるみのような複雑な形状もできる。キルンワークに比べて仕上がりに透明感があり、研磨などの加工をせずに光沢のある仕上がりが得られる。


③ブローワーク
いわゆる吹きガラス。溶かしたガラスを吹き竿に巻き取り作業する。手洗いボウルやランプシェードなど、大きなものも製作可能だが、技能が問われることとなる。
これらの技法に加えて、カットや研磨、サンドブラスト、UVプリントなどの仕上げを施すことで、多様なデザインに対応する。


キルンワークによる製作過程。ほとんどがオーダーメイドでの依頼だという
キルンワークによる製作過程。ほとんどがオーダーメイドでの依頼だという


「Bumpy-CRT-th」の断面を見ると、火口から流れ出た溶岩が積み重なっているようにも見える 
「Bumpy-CRT-th」の断面を見ると、火口から流れ出た溶岩が積み重なっているようにも見える 


蛍光灯のリサイクルガラスの間にステンドガラスを溶着で挟み込んだ「Color -Chaboku」は、水墨画のような表情を見せる
蛍光灯のリサイクルガラスの間にステンドガラスを溶着で挟み込んだ「Color -Chaboku」は、水墨画のような表情を見せる

素材の生かし方

リサイクルガラスを生かすには、光の取り入れ方が重要だ。特に、気泡入りのガラスは光を後方から透過させることで、ガラスの厚みが表現できる。また、小口から光を入れると奥行きが強調される。ブラウン管のリサイクルガラス「Cell」は、その名の通りまるで顕微鏡で見た細胞のようだ。研磨やブラストにより、光の透過や拡散の程度が変わるので、表面仕上げも重要である。なお、気泡の量やバランスはある程度調整できるので、光の効果を加味して検討する。


逆に透過性の低い色付きのガラスの場合、前方から光を当て、反射によって質感を強調する。この場合は表面の仕上げに加え、凹凸などの形状も重要だ。


また、ガラスのエッジをそのまま見せる場合、端部の処理にも気を配る。さまざまな大きさの面を取れるので、シャープに見せるなら最小限の面で、ボリュームを強調するなら大きな面を取るなど、十分に検討したい。


ほとんどがオーダーメイドということもあり、納期は2週間程度。特にガラス厚があると時間を要す。ガラスに歪みを残さないために、ゆっくり冷やす必要があるためだ。30〜40㎜厚だと冷却に1週間は必要になる。


気になる価格は、900×1800×30㎜で35万円程度。コストはそれなりに掛かるが、他にないデザインを具現化できる魅力的な素材だ。


ブラウン管のリサイクルガラス「Cell」は、小口から光を当てることで、まるで顕微鏡で覗きこんだ細胞のように見える
ブラウン管のリサイクルガラス「Cell」は、小口から光を当てることで、まるで顕微鏡で覗きこんだ細胞のように見える

スタジオリライト

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